栗城優介

栗城優介の作品は、人間の心の複雑さを理解し、表現しようとする思いから生まれています。
彼はカール・ユングの考えに影響を受け、「私たちが他人に見せている顔」と「本当の自分」という2つの側面に注目しています。そして、それらを1つにしようと、作品の中で探っています。このような内面を見つめる姿勢は、作品の奥深さや豊かさにつながっています。

栗城のアートは、さまざまなスタイルやイメージを自由に組み合わせて、現実では見られないような身体の形や構図を描いています。その世界は、野性的でスピリチュアル(精神的)な空間。夢や精神分析のように、ふだんは見えない「心の中の世界」を、絵として表しています。彼の色鮮やかでエネルギーに満ちた作品は、キャンバスでも木の板でもすぐにそれとわかる、強い印象を残します。

栗城の人物表現には、繊細で詩のような美しさがあり、そこには静かに隠された神秘的な世界が感じられます。まるで錬金術師のように、彼は「見える世界」と「見えない世界」が交わる場所を描き出します。いかにもわかりやすく見える細かい部分にも、深い意味が込められています。彼の作品は、身体を通して感情や思考を映す「鏡」となり、私たちに人間の美しさや不思議さを改めて感じさせてくれます。

彼の表現は、古代の神話や原始的な考え方にも影響を受けています。そして、それは精神的でありながらも、どこかさまよっているような自由さも持っています。作品に登場するイメージは、神話・宗教・美術史など、さまざまなテーマから集めたもので、それらを本やインターネット、旅先や博物館での写真などから、自ら収集しています。

こうして集めたイメージをもとに、栗城は伝説がよみがえり、眠っていた像から何かが現れるような不思議な世界を描いています。どこで、いつの出来事かははっきりしない、時を超えたような空間。まるで夢の中のようです。栗城が強く惹かれるのは、「見えないもの」や「隠れているもの」。彼は作品の裏側や過去にさかのぼって、まるで考古学者のように、古い記憶や痕跡を見つけ出し、それを今の作品へとつなげていきます。そこには、静かな声や大きな出来事、そして謎が今もなお響いているのです。

私たちの感覚は少しずつずらされ、気づけば想像の世界へと入り込んでいきます。
そしてその中から、どんな物語が生まれるのでしょうか?

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