An interview with Iwazaki san
自然とフロー
あなたの作品は、有機的な動きや自然のリズムと深く結びついているように感じられます。自然を「描くこと」を通して探求したいと意識するようになった最初のきっかけを覚えていますか。
A:
水のもつ幅広い形態変化に惹かれ、その自由さに強く心を動かされたことが、自然を“描くこと”を通して探求したいと意識するようになった最初のきっかけだったと思います

鑑賞者・自己・つながり
制作中に「フロー状態」に入ると語られていますが、その状態では、あなた自身、作品、そして鑑賞者との境界が溶けていくようにも感じられます。制作の最中、こうした関係性についてどのように意識されていますか。
A:
今回のシリーズは、描いた後に別の視点やアイデアを重ねていく制作ですが、ドローイングの段階では作品を自然現象のひとつとして捉えてもらえたら良いかなとおもいます。 制作中は関係性を強く意識するというよりも、“今、描いていること”に没頭できているかどうかを大切にしており、その状態に入れているなら、それが自分にとって良い制作のあり方だと感じています。
東京と静岡
東京で過ごした後、静岡に戻る選択をされましたが、これら二つの環境の違いは、集中力や制作のリズム、そして作品との向き合い方にどのような影響を与えましたか。
A:
東京では外からの刺激が多く、当時は制作に集中することが難しいと感じていました。 一方、静岡に戻ってからは生まれ育った土地ならではの、人との支え合いのある関係性や、ほどよい刺激、豊かな自然に囲まれた環境が制作のリズムを整えてくれたように思います。 必要な時には都内へ1時間ほどでアクセスできる距離感も、自分にとってはちょうど良いバランスでした

ストリートカルチャーと音楽の影響
ストリートカルチャーや電子音楽、特にアブストラクト・ヒップホップは、あなたの制作において重要な要素のように感じられます。直接的な引用ではなく、こうした影響はどのように線やリズム、動きとして作品に反映されているのでしょうか。
A:
絵を描く以前はDJをしていたこともあり、制作中は音楽を聴きながら描くことが自然な流れでした。表現の入り口が音楽だったため、そのリズムや空気感、イメージを可視化しようと試みながら、線や動きとして作品に落とし込んでいます。直接的に引用するのではなく、音楽のように立ち上がる感覚を膨らませるように制作しています
折り紙とフロー
折り紙は、流動性よりも鋭い折りや構造を連想させることが多いですが、紙を折り重ねるという行為は、これまでの「フロー」というテーマをどのように拡張、あるいは問い直すものとなりましたか。
A:
折り紙という“折る”行為を通して、フローは途切れるものではなく、新しい流れを生み出す行為でもあると気づきました。
これまでは平面に線を描くことに集中してきましたが、身近な行為や遊びの要素を取り入れることで、線を彫刻的なニュアンスとして捉え直し、その可能性を実験しています。
音楽でいうドラムの変則的な打ち方のようなダイナミックな変化を求めていた感覚もあり、自身のドローイングを起点に、別の楽しさや展開を見出せたことが大きいです。そして、このプロセスそのものが、とても日本的な行為だと感じています。

結び
「フロー」が常に変化し続けるものであるとしたら、その中で、作品やご自身の内側にどのように新しさを見出し続けているのでしょうか。
また、作品が完成し、フロー状態が終わった後に、あなたの中に残るものは何でしょうか。
A:
新しさは、自分の中に新たな視点が芽生え、何かに気づいた瞬間に生まれるものだと感じています。
そのため、手を動かし実験すること自体が好きで、そこに強いワクワクを覚えます。
自然現象やさまざまな関心事が、頭の中でふと連結された瞬間に、新しい表現が立ち上がる。そのためにも、幅広いものに興味を持ち続ける好奇心を大切にしています。
制作を終えた後には、作品を完成させた達成感とともに、その時の環境やメンタル、技術、アイデアが凝縮された“生きた記録”としての感覚が残ります。作品は、その瞬間にしか生まれ得なかった痕跡だと思っています。